めまいは、平衡感覚の不具合に原因がありますが、患者さんの訴える「めまい」の中には、脳の血液循環の障害によるフラツキや脊柱の老化による頚椎症や腰椎症による身体の揺れがかなりの頻度で含まれます。
脳の血液循環の障害には、脳の動脈硬化症、血圧調整不全、心疾患などが原因となります。
平衡感覚の障害によるめまいは、目、耳、身体の知覚障害、もしくはこれらの器官からの情報を統合する脳の障害により起こります。
従って、まずは聴神経腫瘍といった脳腫瘍や、脳梗塞、脳出血、水頭症といった脳の器質的疾患をMRIやCTといった脳の画像検査にて検索しなければなりません。
しびれの症状は正座したときのそれが典型ですが、一般に知覚が鈍くなったとき(知覚低下)、通常とは違う知覚(例えば、ビリビリとかピリピリ)を覚えたとき(異常知覚)、そして力が何となく弱くなったとき(運動麻痺)に“しびれ”と表現されます。知覚低下ないしは異常知覚という知覚の障害が起こる部位は、脳、脊髄、末梢神経と大きく3つに分けることができます。
原因しびれの原因となる外科的疾患は、脳では脳腫瘍、脳血管障害、脊髄では頚椎症、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、脊髄腫瘍、脊髄空洞症など、末梢神経では橈骨神経麻痺、尺骨神経麻痺、正中神経麻痺などがあげられます。
内科的疾患としては、種々の変性脱髄疾患、薬物、重金属、有機溶剤などによる中毒、ギランバレー症候群等の感染もしくは免疫学的な疾患が挙げられます。
また、おおまかにいうと、片側の手足のしびれの場合には脳、両手とか両足のしびれでは脊髄、片方の手だけという場合には、末梢神経が原因と考えられます。
しびれの原因としてもっとも頻度の高いのは頚椎症ですが、多発性の末梢神経障害なのか、頚髄の障害なのか、はたまた脳に問題があるのか判然としない場合もあります。脳に限らず、脊椎・脊髄系の異常の診断には多くの場合、MRI検査を必要とします。
高齢者ではこれらの検査を行っても、脳にも脊髄にも問題があり、責任病巣がどこにあるのか判然としない場合も多くみられます。
ふるえは、医学的には、自分の意志とは関係なく、勝手に目的なく動く運動(不随意運動)をいいます。
ふるえの代表はリズミカルに動く不随意運動で振戦といいます。そして振戦の代表はパーキンソン病と本態性振戦です。
40歳を超えると、ものわすれが気になってきますが、多くの場合は加齢による生理的なものです。しかし、いわゆる認知症の初期症状であることもあります。
ここで、ものわすれを治療可能もしくは予防可能なものと治療効果の上がらないものに分けて考えてみましょう。
治療可能なものわすれのほとんどは、脳神経外科手術によって症状が軽減するもので、代表的な疾患としては、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、良性脳腫瘍等が挙げられます。
予防可能なものとしては、脳の血管障害によって起こるものわすれ(血管性認知症)があります。
このものわすれの根底には高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などの生活習慣病があります。生活習慣病がある場合には脳のMRI検査を行い、無症候性の脳梗塞や慢性脳循環不全の所見があるかどうかを把握し、更には脳に行く頸動脈の超音波検査で動脈硬化の度合いを評価して、高血圧や高脂血症、糖尿病のコントロールを行って血管性認知症を予防します。
治療が難しいものわすれは、いわば狭義のものわすれ、いわゆる認知症といえます。有名なアルツハイマー病や近年有名になったレビー小体型認知症がこれに当てはまります。これら疾患に対して一連の抗認知症薬が投与されますが、早めの投与と周囲の方の理解が必要となります。
ただ、これらの薬剤を上手に使っても、若干効果が乏しいと感じられることがあります。更に有用な薬剤の登場が待たれるところです。
このグループに属するものとして他に【前頭側頭型認知症】【進行性核上性麻痺】【大脳皮質基底核変性症】などがあります。
アルツハイマー病を始めとするこれらの疾患では脳の萎縮が進行しますので、疾病の診断や経過の把握にMRI検査、CT検査での脳萎縮の程度が参考とされる場合があります。
また、脳の代謝機能や血流循環も低下しますので、SPECT検査が必要とされる場合があります。
最近では、できるだけ早期に認知症になりそうな人を発見することと、認知症の患者さんに丁寧に寄り添うことが治療上、介護上の目標とされる傾向にあります。
頭部外傷の怖いところは、受傷時はなんともないのに、時間が経過すると、頭蓋骨の中に血が溜まったり、脳がむくんで来たりすることです。頭部外傷に対する脳神経外科医の診察は、もうすでにこのようなことが起こっているのか、それとも今は良くても数時間後は大丈夫なのか、まずは、この点に集中されます。殆どの場合、頭蓋骨や頚椎の損傷を把握するためのレントゲン撮影、頭蓋内の状況を見るための画像検査が行われます。
高齢者の場合、外傷直後には全く異常が無くても、1-2か月後に頭の中に血液が貯まること(慢性硬膜下血腫)が比較的多く起こり、綿密な経過観察が必要です。頭部外傷を契機とする病態には以下のようなものがあります。
脳や脊髄という中枢神経はとても高度な働きをしますが、一度損傷を受けた場合の回復力は他の臓器、器官に比べて微々たるものです。この回復力の弱さが後遺症として現れます。従って、中枢神経の場合、早期に異常を見つけ出して適切な手を打つことが大切です。
どのような症状に注目すべきか改めてまとめてみました。
下記のような症状を呈する場合には早めの受診が必要です。